佐野元春 | VISITORS 20TH Anniversary Edition


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9ストーリーズ ヴィジターズを巡る9つのストーリー




09 ヴィジターズ・ツアー

Text : 池田聡子

 1984年春、ニューヨークからの帰国第1弾アルバムとして発表された『VISITORS』が、戸惑いと称賛という両面を持って迎えられる中、同じ年の秋、『VISITORS』にともなうツアーが開始された。

 佐野元春初の本格的全国ツアーとなった「ロックンロールナイト・ツアー」からおよそ2年ぶりとなる全国ツアーである「ビジターズ・ツアー」。1984年10月1日、前橋文化会館を皮切りにスタートした「ビジターズ・ツアー」は、全国69ケ所83公演にも及び、公演数では「ロックンロールナイト・ツアー」の1.5倍にもなる一大ツアーとなった。

 ツアーをともにするザ・ハートランドのメンバーは、古田たかし(Ds)、小野田清文(B)、西本明(Kbd)、阿部吉剛(Kbd)の4人はそのままで、ギターが伊藤銀次から横内タケに交替し、さらにパーカッションとして里村美和が加わった6人となった。

 また、前回のツアーではザ・ハートランドのメンバーとして参加していたサックスのダディ柴田は、トランペットの石垣三十郎とトロンボーンのボーン助谷の二人と共に、以降、佐野元春のツアーには欠くことのできないホーンセクション・グループ「Tokyo Be-Bop」を結成し参加している。

 2年もの間、佐野元春のライヴを待ち焦がれていたファンが訪れ、アルバム『VISITORS』をメインに据えた曲構成と、デジタル・ビートを前面に打ち出した内容に、ライヴ会場はまさにダンス・ホールのような熱気に包まれた。ステージにおける佐野のカリスマは日増しに増大していった。

 ステージには佐野の演出によって数十台のTVモニターがセットされ、音楽と映像が有機的に連動しながら進行するという、当時はまだ誰も試みていなかったマルチメディア的な表現を実現した。

 この時期の佐野は強力な磁力を持った『VISITORS』というアート・コンセプトをもとに、レコードだけでなくライブにおいても国内ロック・シーンに新たな表現の可能性を示した。佐野の革新に向けての強大な情熱はとどまることはなかった。

 ラストには、何百もの真っ白な風船が天井から舞い降りる仕掛けもまた訪れるファンの気持ちを捕らえた一つだった。その熱気は、1985年5月29日の品川プリンスホテル・アイスアリーナでの「ビジターズ・ツアー」最終日まで続いた。





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09 ヴィジターズ・ツアー






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