07 | 「The Barn Tour」大阪ファイナル
1997-1998



 そのタイトルが数々のロックの名作を生んだウッドストックの有名なレコーディング・スタジオの名前にちなんでいることに象徴されるように、『ザ・バーン』はロック特有のムードを満々とたたえた傑作だった。そして、そのアルバムを携えた「ザ・バーン・ツアー」も同様に、ロックならではの魅力にあふれていた。
 
 1998年3月29日。ツアーが大詰めを迎えた大阪3公演の最終日。佐野は『ザ・バーン』に貢献してくれたふたりのミュージシャンをアメリカから招いた。ジョン・サイモンとガース・ハドソン。言うまでもなく、サイモンは『ザ・バーン』のプロデューサーであり、ハドソンはアメリカ最高のロック・グループであるザ・バンドのメンバーだ。

 コンサートの中程、佐野の紹介でまずジョン・サイモンが登場し、覚えたての関西弁で「ボクヲ ニホンニヨンデクレテ オオキニ」と挨拶したあと、エレクトリック・ピアノを弾きながら自作曲の「ソー・ゴーズ・ザ・ソング」(佐野が英語の詞を提供)を歌った。続いてガース・ハドソンがゆっくりとステージに姿を現わし、「7日じゃたりない」にアコーディオンで参加した。そして、曲はそのまま「ロックンロール・ハート」へと続いていった。
 
 ザ・バンドの最初の3作をはじめ、数々の優れたロック・アルバムをプロデュースしたサイモンと、そのザ・バンドの素晴らしいキーボード奏者ハドソン。ふたりと佐野&ザ・ホーボー・キング・バンドとの一夜限りの共演は、“歴史的な出来事”といっても決して大げさではないだろう。
 
 しかし、こちらのそうした興奮をよそに、佐野たちはことさらはしゃぐこともなく、そしてふたりに対して最大級の敬意を払いながら、いかにも楽しそうにセッションを繰りひろげた。その“自然さ”は感動的といっていいものだった。国籍や人権や世代を越えたミュージシャンシップ。ウッドストックで作られた充実したロック・アルバム『ザ・バーン』の意義や価値を再確認したこの夜のコンサートだった。
 
 後にこの模様は、『THE BARN TOUR'98 LIVE IN OSAKA』 としてエピック・レーベルから記録ビデオがリリースされている。

(山本智志)



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